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あxらxすxじ

「扉」の
向こうが現世であり空間と空間が繋がっているのは門番《ゲートキーパー》のおかげ。
「扉」が
現世でない世界に繋がった時。探偵は動き出す。

「扉」の
向こうに消えていってしまった兄の行方を捜すために探偵事務所を訪れた櫻井祐希。
「扉」の
魔法が彼女を包んだ瞬間だった。




序章


『門伴探偵事務所』の標識が見える。
私、櫻井祐希はそこで立ち止まる。そして、思い出す。
失踪した兄がなんと言っていたか。

「この扉の向こうに行って帰ってこなかったら六騎木三丁目の『門伴探偵事務所』の門伴探偵に会え」

ただ単に寝室へ通じる『扉』を開けて中に入るだけなのに大袈裟だなぁと思っていたら、兄は失踪してしまった。
『扉』が閉じられた後冗談のように大きな悲鳴が鳴り響いき、
驚いた私が『扉』を急いで開けてみると荒らされた部屋がまず目に入り、
そしてその部屋のどこにも兄の姿はなかった。

そして。
一週間経ったがまだ兄からの連絡はない。
最終手段と考えていた兄からの最後の言葉、
「門伴探偵に会え」を忠実に実行した妹の私だった。
探偵に対して、現実の探偵に対してあまりよく思っていないのが現実だ。
浮気の調査など警察が取り合わない雑訴を頻りに摘み取っているイメージ。
必要だけど、普通に生きているぶんには必要ない。
日陰の植物。
陰性植物。
これはろくな日光も当たらないところでもしぶとく生きているイメージ。
空想の探偵に至っては言語両断だ。
行く先々で事件は起き(事件誘引体質とはよくいったものだ)その都度警察の地道な捜査を踏みにじって解決案を提示し、
それが真実となるという特権を持っている探偵達。
紙面を騒がせる一方、警察の出番を無くす存在。
いい加減あんたらが外出する度に事件が起きているという事実を受け入れて家の中で悶々と暮らしていてほしい。

以上、私の持論、終了!
交差点を渡り、探偵事務所がある田沼煙草ビルヂングの前に立つ。
よし、と気合いをあげ『扉』にてをかける。

開けた瞬間、私は既に三階の探偵事務所の扉を開けていた。

道路の喧騒は一瞬にして消え、
替わりにチリンという古風で小さなベルが主に来訪者を告げた。
私は驚いて回りを見る。
今まで立っていた石畳の歩道は消え失せ、
替わりに軋む木の床が私の身体を支えていた。
目の前には今さっきまでドアノブを握っていた『田沼煙草ビルヂング』と書かれた古そうな硝子戸はなく、
替わりに年季の入った木の『扉』の金のノブを握っていた。
慌てて手を放す。
わたしはいつのまに建物に入り、三階まで上がりこの『扉』に手をかけて開けていた・・・?
一旦閉める。
騒々しい道路脇に出るかと思ったら私はまだ建物の中の探偵事務所の扉の前だった。
扉に書かれた文字を読む。
『門伴探偵事務所』。
それは今は亡き(死んでないけど)兄が行けと命じた探偵事務所だった。

「どうぞお入りください、櫻井祐希さん」
中から少年のような声がした瞬間、私は事務所の中の椅子に座っていた。
はてなマークが頭上を飛び交う私の前には赤いワイシャツに蝶ネクタイ、
サスペンダーをつけ肩でズボンを支える少年がちょこんと椅子の上に座りながら煙のでないパイプをくわえていた。
何処かで見た嫌いな少年探偵の一人に見える。
この少年が門伴探偵だろうか?
「どうぞ、アールグレイです。」
彼はそう言って手前の机に紅茶を置く。
用心深い私は口をつけようとも思わない。
「用件は貴女の兄、櫻井門司氏の行方の捜索です、ね?」
そう信じて疑わない目だった。
依頼人がいう前に依頼内容を当てる?
いや待て待て・・・!
私はまだ一言も喋っていない!当然自分の名前さえ明かしていないのに!
新手の詐欺だろうか。
こうして以下にも自分には分からないことはないとアピールすることで信者にして金を集めているのでは?
「どうして、私のなまえが分かったの?」
聞く。
すると少年はニヤリとしてから「わかってしまうからですよ」と自慢気に言った。
「では私の依頼内容は?」
続いて違う質問を投げつける。
するとやはりさっきと同じように少年はニヤリとしてから「わかってしまうからですよ」と自慢気に言った。
いよいよ胡散臭い。
「じゃあ、私のスリーサイズ、分かる?」
少年の頬と耳は赤くなった。こうなればこっちの勝ちだ。
「分からないんだ」
少年はうう、と呻く。それでも私のスリーサイズを当てようとしているのか、
私の身体を舐めるように見る。
だが冬に厚着になっている女子のスリーサイズなど当てられるはずなどなかった。
少年が真っ赤になってしどろもどろしていると奥の衝立の向こうから声がした。

「僕の弟子の明智くんをいじめないでくれないか」

その後出てきた黒髪の青年は黒いシャツ、上着、ネクタイ、
そして黒いズボンと黒く統一した用紙はまるで烏だった。
「弟子なのに明智なの?早く出世しないと馬鹿にされるわよ。」
私は感じた違和感を明智少年に言う。赤面の少年は俯いた。
「彼を紹介する度に言われるよ」
黒衣の青年は言う。
「あなたが・・・。」
「そう、僕が探偵の門伴雄二です。宜しく、櫻井祐希さん」
やはり彼も私のなまえを知っている。本丸は彼か。
「あなたはあなたの名前を僕達が何故知っているか知りたい。でしょう?」
探偵は問う。
私の答えはもちろんイエスだ。
「コンピューターウイルスの『ボット』って知っていますか?」
「・・・・・・?」
知らない。
だがそれとこれとなんの関係が・・・?
「では、教えてあげましょう。
『ボット』とはコンピューターウイルスの一種であり、
この地球上でもっとも広まっているウイルスの一つと言っても過言ではありません。
それはネットワーク回線に一度繋いだだけで感染してしまうウイルスで、
感染したパソコンをウイルスの作成者が操れるようになります。
恐ろしいですね。
数年前、私はこの『ボット』の特徴だけ抽出して新しい対人ウイル『スノボット』を作りました。
人から人へ感染するウイルスです。」
そこで探偵は私の濁っているだろう眼球を覗く。後退りする。顔が近かった。
「目が澄んでいる。『ノボット』に感染してないな。だいたい君に感染するわけないんだ。」
「・・・感染するわけない?・・・それはどう言うことですか?」
すると黒衣の青年はニヤリと笑いながら言う。

【以降次回へ・・・】


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