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『電脳六区』に戻る
あ-ら-す-じ
境界に侵入成功した小此木。
だが強制的にサルベージュされてしまう。
憤る彼が向かったランデブーポイントに待ち受けた人物とは?
第一章:残骸の自我の同一性
[Chapter 1:the identity of the corpse]
小此木中尉が目を覚ましたのは第五十八医務室だった。
横に腰掛けている小柄な女医は、目が覚めたのを確認すると何かを書き取った後、席を立った。
机の上には弟切草が一本、花瓶に挿してあった。
ーーーー花言葉は、「迷信」「秘密」「盲信」「信心」「恨み」「敵意」 だったな。
そう思いながら、瞬時に誰が置いて行ったかを確信した小此木は身体を起こそうとする。
しかし、補助してくれるはずの看護ベッドは起動せず、結果腰を痛めるだけだった。
呻きながら思い出すのは気を失う前。
ーーーーあれは確か、メインコンピューターに侵入・・・
「やあ、目が覚めたね」
「!?」
驚きながら右を向くと、先程女医が座っていた椅子には黒髪の青年が座っていた。
顔は十代だが、白髪が少し頭髪から覗いている。皺《しわ》はないようだが。
白いワイシャツにネクタイ、それらを考慮すると学生に見えなくもない。
だが平日のこの時間に、しかも小此木の知人でもないくせに来訪するような物好きな学生がいるとは考え難かった。
「俺に何のようだ?」
訝しげに聞く。
「やだなぁ。君は勝手に僕の世界に土足で入ってきたじゃないか。」
「・・・!?」
ーーー彼が・・・境界の管理人?
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