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前回までのアラスジ
『女だ』
複葉機で降りてきた金髪の美少女・高槻五月。
彼女を噂する集団。
そして、決して遠くはない未来。
黒き侵食を見守る男。
時を逆行させ、発端を探る。
[その壱] |
[その弐] |
[その参] |
[その四] |
[その伍]
第一章:セクター29の発端
その壱
暑い季節の到来は、女子を薄着にする。
そして汗で透けた服の向こうに覗く下着を求めて、枚方光治はスニーカーを穿く。
暗い玄関。
煩い蝉の声。
きつい日差し。
全てが夏を物語っていた。
玄関を出ると、八月中旬の熱気が彼を発汗させる。
ぐっどさまー。
彼が住む第二十八地区は温度調節ができない旧型の区画である。
新型の四十地区以降は地区全体が夏も涼しくなるように設定されている。
涼しい反面夏が感じられないのが盲点だ。
しかし枚方は気にしない。汗まみれになりながら角を曲がる。
ベターに曲がり角でトーストをくわえた女子高生にぶつかることを、
億分の1ほどの確率を願ったが枚方とぶつかる人はいなかった。
そのまま冷房が効いた第五十七地区に這入った。
直後反対方向から歩いてくる人物を視認する。
尼崎翔子だ。
「おう、ひらっち。お早う。。」
片手を挙げながら近づいてくる黒髪ポニーテール少女は枚方の幼馴染みだ。
今時珍しい関係ではあるが。
・・・ちなみに中学に入るまで一緒に風呂に入ってたと噂される。
「おー、元気いいなお前。朝からよぉ。」
「そういうひらっちこそ。」にやにやする翔子。
「また妹さんにいたずらしてきたんだって?。」
「してねぇわ!。」そんなやり取りは毎日繰り返される。
・・・・・・恒例行事、て大事だよね。
そう思うのは翔子だけだが。
「朝からほんと元気いいなぁ。その元気、分けてくれよ。」
「ん?。」翔子はくねらせる。
「ぬぅー・・・じゃあ、こうだ!くらえっ。」
翔子は何を思ったか両腕を広げ、枚方にのし掛かった。
もとい抱きついた。
「・・・・・・!?。」
突如背後に生まれた柔らかい感触と身体から漂うシャンプーらしき香りが包み込む。戸惑い。そして赤面。
「ば、ばかっ、放せっ。」
だが幾らもがこうが彼女の拘束は解けない。
「いーじゃん、いーにゃん。私と裸の仲の男が何を云うーっ。」
「誤解だらけだろ、その言い方ぁー!。」
どうにか振りほどくとちぇっと翔子は舌打ちする。
・・・・・・昔から色仕掛けは通じないもんね。
そう思考し切り替える。再装填。
「今日はどちら?。」
「市民プール。なんか十数年ぶりに解放するらしいんよ。記念に・・・。」
「女子のビキニを拝みに?。」
「そう滅多に見られない・・・て違うわ!。」
「よっ、ノリ突っ込み!。」
「・・・はぁ。やっぱお前といると疲れるよ。」
しょぼーんとなる女子。
つか頭が爪先につくとか柔らか!
つか上がったスカートが絶妙のところで止まってるんですけど!
手を置くと臀部をさわりかねないので仕方なく顔を蹴った。
・・・・・・なにが仕方なくなんだろう。
が、それは外れた。否、外された。
彼女は枚方の足が動作するとほぼ同時に行動したからだ。
両手を地につけ、そのまま逆立ちのよう要領で両足を降り上げる。
同時に頭部が後ろに下がる。
枚方が気づいたときには翔子の踵が頭頂部にヒットした。
くらっと崩れそうになる足首を掴むと翔子は思いっきり引き下ろした。
「!?。」
枚方にはなにが起きたか解らないまま地面に転がる次第となった。
「い、いってぇ・・・!!。」
くるんと回ると彼女は手をパンパンと叩いた。
「かぁ・・・容赦ないね。」
「セクハラしようとしたからよ。天罰、てんばつぅ!。」
きゃはきゃはと笑う女子。
・・・・・・天罰を下すのはお前じゃねえだろ。
「だがしかし、この位置はいいな。」
地面に転がりながら枚方は云う。
「んー、なんでだろー?。」
「・・・今日は白なんだな。」
「はっ。」
必死に隠そうとスカートを押さえるが、如何せん枚方の中の記憶は隠せない。
目を閉じ、記憶を反芻する。
「白ぱんとはメジャーなぱんつを選んだな。」
さっきの反撃を開始する。
「い、いうなぁあ!。」
赤面。むっちゃ赤面。
「もう目に焼き付いちゃったもんね、翔ちゃんの白いぱんつ!。」
「ぱんついうなぁあ!。」
右足のサンダルを上げるとそのまま枚方の顔面に降り下ろした。
「ぶべらっ!。」
悲鳴。顔を上げると翔子はいなかった。
抜き足で去ったのか。
・・・・・・一言も言わずに去るとは。やりすぎた!?
「ふぅ。面倒な女だぜ・・・。」
チャラ男風に呟くと枚方は歩き出す。
思考を切り替えた枚方の頭の中には水着の楽園が広がっていた。
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